帰郷・番外編・その5

実は当初の予定は七尾という町ではなくて穴水・輪島であった。

TOYOTAのレンタカー屋さんのカウンターでプランを

相談していると僕が思っているより大層に距離があり、

「日帰りですと・・・。大忙しです。」

みたいな事をアドバイスされたのである。

「七尾」という町をとりあえずの目的地として僕はヴィッツに

乗り込んだのだった。

高岡から氷見を経て石川県に入り、海岸沿いの国道160号を

北上した。途中喉の渇きに促されステイション・オブ・ロードの

パーキングスペースに車を寄せた。

車から降り、缶コーヒーを片手に煙草に火をつけ初冬の日本海を

眺めていた。薄いグレイの雲が低く立ち込め海の色もマリンブルー

とは程遠い。それでも広がっているこの視界とは異なり、

僕の気持ちは軽かったと思う。

ヴィッツのエンジンの静かな鼓動と波のざわめきが重なり

不思議な優しいサウンドが奏でられていた瞬間だった。

これだけでもとても満たされていた僕に誰のプレゼントか解らな

いが遠くからJ・D・Southerの「YOU’RE ONLY

LONELY」が聞こえて来た。

レストランの方向からである。僕は耳に届いている全ての音に

この時身を委ねた。

ライト・ブルーの記憶が微かに蘇って来る。何故か切ない。

何と伝えて良いのか解らないが幸福な瞬間の一つである事は

間違いない。しかし、「44歳のおとっつあん」の幸福な

瞬間は短い。自然が呼んでいるのである。

結局最後まで聞けずに小走りにレストランの端っこの方に向かった。

「喉の渇き」からの件は勿論フィクションである。

All Rights Reserved.

正式名称「能登食祭市場(七尾フイッシャーマンズワーフ)」である。

やはり足がこちらのエリアに向かってしまう。

勿論、御腹は減ってはいないのであるが・・・。

今回は申し訳無いが「観る」だけと決めてはいた・・・。

021008_1422_art52All Rights Reserved.
All Rights Reserved.
All Rights Reserved.
All Rights Reserved.

お店のお姉さんの方々には例によって色々声を掛けて貰ったのだが

「先日近江町市場で沢山買っちゃったんですよ。どーもスンマセン」

と言ってしのいだ。「あーそうなの。それじゃーね。こっちの方が

あっちより良い物多いのにー」と言われた。

そして少し間を置いてから「じゃー。今度はこっちで買ってね」

と言われ「じゃぁー、この加熱用の牡蠣を下さい」とまんまと

お姉さん方々の話術のはまり結局購入してしまった。

レンタカーを返して高岡の実家に戻り包みを開けるととても丁寧に

梱包されていて凄く嬉しかったのである。

この牡蠣はその晩にレモン醤油で頂きました。

All Rights Reserved.