ヴィレッジ

ヴィレッジ 長い間歯医者に通ってしまった。

予定外である。初めは長くて2,3週間で終わるだろうと考えていた。通ってしまう破目になってしまったのだ。何時の間にか虫歯が大暴れしていたのだ。全く知らなかったのだ。「こんなに長くなるのならもう少し前に来ていたのに・・・・・・」と言う魂の叫びは誰も聞いてはいない。同時に「自業自得でしょ」と言いたげな若くて綺麗で親切そうで実は全く事務的な受付のおねぇさんがいた。何とか9月7日の歯垢採りでやっとこエンドとなった。

6月の初めからだったので丸々3ヶ月である。ひと夏である。2004年の夏はアテネより僕にとっては歯医者とのバトルとして記憶される様な気がする。一番最後には前回僕が逃げて先送りにしていた親知らずの抜歯というビッグイベントも有った。前回の治療の時は小さな虫歯が2ヶ所で4,5回通っただけで済んだ。そしてあんまり痛い思いもしなかったのだ。それから2年が過ぎて今回である。正直簡単に考えていた。何となく気になる箇所が一つ有り、定期健診ぐらいに考えていたのだ。甘かった。 全部で6ヶ所程麻酔をかけ削り、埋めるという様な作業を繰り返した。全く何時の間にこんな事になっていたのだろう?普段そんなには痛くも無かったのだ。まぁ、痛くなってからでは遅いのだろうけれども。

この麻酔は心底嫌いである。細い長い針を3,4ヶ所ぶすぶすとその歯の根元あたりを突き刺すのだ。じんわりとその近辺の感覚が無くなって来る。だんだん頭の中にまで麻酔が効いている様な錯覚に囚われる。脳みそをサランラップで覆った様である。

治療が終わり病院を出てからも何となくボーっとして来てかみ合わせが変なのだ。当然ではあるが1時間位は飲み食いは厳禁だ。そして1時間位経ってお腹が減り、食欲もあるのに麻酔が切れて痛みが始まるのだ。つまり何も食べられないのである。歯医者に行く前に多少つまんでおけば良いのだが治療前には全く食欲がないのだ。

ナイト・シャマラン監督の「The Village」を観て来た。場所はワーナー・マイカルのシネコンで大宮サティの5階である。チャン・イーモウ監督の「Lovers」とどっちにようかな?と少し迷ったけれどもロン・ハワードの娘さんのブライス・ダラス・ハワードが良いと何処かの雑誌で目にしたのを思い出し、決めた。ちなみにロン・ハワード監督の作品には「アポロ13」(95)や「身代金」(96)「ビューティフル・マインド」(01)が有る。

僕が中学生の時に観た「アメリカン・グラフティ」(73)では綿パンにブルーのギンガムチェックのボタンダウンが良く似合っていた。

作品のストーリーは1897年のペンシルヴァニアの小さなヴィレッジ=村から始まる。季節は晩秋から初冬にかけてである。この時期の美しい森林や野原の描写は作品自体にとても深い奥行きを生んでいると思う。小春日和の時の気温の緩みや小雨の時の風の冷たさが無理なく伝わってくるのだ。僕はこの辺りの季節の描写は好きである

どうやらこの村の住人は外界とは殆んど接触を持たずに自給自足の生活をしている

様なのだ。村全体が家族であり、面だったいさかいもなく、様々な取り決めも村の長老達の話し合いで進められている。これはこれである種のユートピアとして捉える方がいてもおかしくはないと思う。唯一つの問題は森に住んでいる 「彼ら」の存在である。この豊かな自然に囲まれた温和な人々の住む村が「彼ら」の存在によって脅かされつつあるのだ。しかし、多くの事柄さえ望まなければ村人と「彼ら」の間の均衡は保たれるのである。村から邪悪なる物を遠ざける事が出来るのだ。

悩ませてくれる作品であると僕は思う。

あんまり深読みするのも見当違いの様な気もするし、「彼ら」・「村の長老」・「盲目の女性」・「好奇心の強い青年」・「知恵の未発達の青年」などがひとりひとり何かの隠喩なのではと考えてしまいたくなる感じもするのだ。解釈を色々したくなるのだ。

映画を見終わって色々な友人と話したいなと思った。感想が聞きたいのだ。それは「嫌い」「ツマラナイ」「退屈」「号泣」「感動のあまり席が立てない」「大好き」などなど・・・

何でも良いのだ。僕と意見が合う必要は勿論無いのである。

悩まない作品というのは一人でじっくり「原作でも読んでみようかな」とか「監督や出演者の過去の作品を探そう」とか「映画の食事のシーンに出てきた同じメニューを食べる」などなどがスムースに出来る物である。他人を巻き込まずに作品を堪能できるものである。

素直にブライス・ダラス・ハワード演ずるアイヴィーのホアキン・フェニックス演ずるルシアスへの愛として物語を観賞すれば良いのであろうか?

シャマラン監督の過去の作品{シックス・センス(99)、アンブレイカブル(00)サイン(02)}もこうして思い出してみれば直球とは言えない物ばかりである。ドンでん返し狙いとも思わないのだけれども・・・・・。僕はわりとこの手の反則すれすれの展開は楽しみである。この種の構成をシャマラン監督には期待しているのだ。好みという物だ。だから「これって有りかよぉー?」と声を大にする友人がいても不思議ではない。

所であの村には歯医者は在ったのだろうか?当時は現在の様に麻酔をかけてから抜歯をしたのだろうか?とてもとても気になる僕である。親知らずを麻酔無しで抜く事を想像すると・・・・。何だか痛さが蘇ってきそうである。全く悩ませ困らせる映画である。

2004年9月22日(水)