グラン・ブルー Part 2

グラン・ブルー 完全版 ―デジタル・レストア・バージョン― [DVD]All Rights Reserved.

「グラン・ブルー」とは潜水夫用語で海面も海底も見えない深さの部分を言うそうである。僕が一番深く潜った海の深さは30m前後だった。当然ではあるがスキューバダイビングであり、背中に重たい物をしょっていたのである。だいたい通常のダイビングではほとんど深く潜水する事はない。せいぜい14、5mである。様々な状況は有るが浅瀬のリーフの辺りの方がお魚サン達と遊ぶ事が出来るからだと僕は思う。

場所は沖縄本島の万座毛の南西に位置するポイントでリーフの終わりの部分から急激に落ちていて断崖絶壁の岩肌であった。ドロップ・オフと言われているロケーションである。眼下に濃い青が広がった一瞬はスローモーションで空を飛んでいる錯覚に包まれた。無重力ってのはこんな感じなのかなとも思った。

自分の視線の方向とフォーカスを何処に合わせるかで青という色の濃度が変わるのだ。前方に合わせれば海面に近い部分で陽射しが届いているので水色だ。

実際のこのドロップオフの底の水深は分からない。透明度に関してみれば15,6mはあったはずだ。だから最低でも70mくらいはあると思う。底の色はネイビーブルーよりもう少し薄く群青・ウルトラマリンあたりだと感じた。海の中の色は天気によって微妙にその濃淡を変えていく。雲の多い日はやはり重たい青で紫苑とか花色と呼んでいいと思う。また、午前中と午後、時間帯によっても違うし、海底のロケーションにも影響される。始めて所謂この断崖=ドロップオフのポイントに入った時は天候にも恵まれていて明るく感じられた。浅瀬の辺りは薄い青で勿忘草色、露草色であり、水深が増すに連れて濃くなって行くのである。

ここでこの色について記しておきたいと思います。一言でブルーと言ってもその色合いを連想させるのはとても難しい。紫苑とか花色と書かれてもイメージとしてビジュアルとしてその色が出て来ないと思う。僕もどの様に色を表記したらと考えていたらこの本と出合ったのである。そこで僕が使用というか参考にさせて頂いたのが小学館発行の「色の手帖」である。個人的に言わせて頂くがとても興味深く、面白い本である。一家に一冊有っても良いと思う。358色の色のガイド本である。このガイドを横目で覗きながら読んで貰えると臨場感が伝わるかもしれない。

「The Day Of The Dolphin」という1973年度の作品が有った。邦題は「イルカの日」でジョージ・C・スコット主演でマイク・ニコルズが監督されたアメリカの映画である。イルカの「ファー」と「ビー」の物語りである。ストーリーは海洋学者がイルカに言語を習得させた所に政府の要人暗殺計画に利用させられそうになって・・・。という物だ。

僕はこれを観るともなしにテレビの日曜洋画劇場でだらだらと観ていた。小学校の高学年の頃だった。だんだん引き込まれて行ったのは言うまでも無い事であろう。14,5年前に沖縄の当時40代後半のダイビングショップのオーナーとこの映画の話で盛り上がった。しかし「君も古いな」と、当時、笑いながら言われた。今からは30年も前の作品ではあるが僕にとっての印象はかなりストロングである。

日曜日の夜だったので何と我が家全員で観ていた。ラストの辺りでは幼な心も手伝って本当に「ファー」と「ビー」と海洋学者の先生が翻訳の吹き替えにも関らず会話をしている様に感じられた。僕の瞳には涙腺から液体がダムが決壊した時の様に押し寄せて来ていた。しかし、このお婆ちゃん、オヤジ、オフクロ、兄貴のいる部屋では絶対に避けたかった。特に兄貴の「こいつ、泣いてやんの」という一言がだいたい想像出来たからである。しかし、この時は兄も鼻をすすっていた。僕はこの音を聞いた時に顔を覗き込んで兄が言うであろうセリフを言おうと一瞬思ったのだがあまりにも「ファー」と「ビー」が健気で切なくて一生懸命だったので止めた。止めなければバトルは当然有ったであろう。

しかしながらこの映画の海の青さも綺麗であった。とても透明感が有り、画面の海に飛び込みたかった。記憶が曖昧で申し訳ないが沖縄のブルーより薄いというかグリーンが入っていた様な気がしてならない。例のガイドを参考にするとピーコックブルーとかナイルブルーとかターコイズブルーなどのブルーが思い出された。